コウヤマキとは
コウヤマキは、ヒマラヤスギやナンヨウスギと並んで世界三大美樹のひとつに数えられています。日本の固有種であり、コウヤマキ(高野槙)という名は高野山に多くみられることが由来です。高さは20~30mほどが一般的ですが、中には40mを超える大きなものも存在します。
コウヤマキの基本情報
目 | マツ目 |
科 | コウヤマキ科 |
属 | コウヤマキ属 |
学名 | Sciadopitys verticillata |
和名 | コウヤマキ、ホンマキ |
植生 | 常緑高木 |
開花期 | 4月 |
コウヤマキの分布
数百万年前は北半球に広く分布したとされているコウヤマキですが、現在は気候変動などの影響もあり、日本と韓国・済州島というごく限られた場所にしか自生していません。日本においても分布地域は福島県から九州に限られており、一部地域ではレッドリストにも入っているほど希少な樹木です。
コウヤマキの歴史
コウヤマキは日本の木工文化に欠かせない樹木であり、水に強い性質を持つことから古くは弥生時代や古墳時代の木棺の材料として利用されていたといわれています。その後も船や風呂桶、武家屋敷とさまざまな用途で使用されましたが、江戸時代には数が激減してしまったため、木曽五木や高野六木に指定されて保護が呼びかけられました。
悠仁親王のお印にもなっている
コウヤマキは、秋篠宮悠仁親王のお印にもなっています。コウヤマキは9月6日の誕生花ですが、これは悠仁親王のお誕生日に由来します。
コウヤマキの特徴
コウヤマキは「Japanese Umbrella pine」という英名がついている通り、真っ直ぐのびた幹と傘のように葉を茂らせた見た目が特徴的です。
コウヤマキの花
コウヤマキは雄花と雌花が同じ株に咲く植物です。雄花は薄い黄色で、枝の先に20~30個連なります。一方雌花は、オレンジがかった色で枝先に1~2個開花します。開花の時期はおおむね4月で、開花する期間は10日と非常に短くなっています。
コウヤマキの花言葉
コウヤマキの花言葉は「奥ゆかしさ」です。奥ゆかしさとは、上品で慎み深く、魅力的なさまを表します。派手さはありませんが、上品で凛とした雰囲気のコウヤマキにぴったりの花言葉ですね。またコウヤマキは源実朝の和歌にも詠まれたこともあり、どことなく風情のある高木です。
コウヤマキの葉
コウヤマキは常緑の樹木なので、葉はいつでも緑色をしています。長い枝には鱗片葉といわれるうろこ状の葉があり、短い枝には長さ6~13cmの針葉が放射状に生えています。針葉の先がわずかながらへこんでいるのが特徴です。
コウヤマキの幹
コウヤマキの幹は直径1mほどです。大きいものだと1.5mほどになるものもあります。色は赤褐色で、樹皮がはがれるところも特徴のひとつです。
コウヤマキの実
コウヤマキはマツ目であるため、雌花が咲いた後には「球果」、いわゆる「松ぼっくり」が出てきます。この松ぼっくりの中にあるのがコウヤマキの実です。
コウヤマキの香り
コウヤマキは、アロマオイルに利用されることもあります。爽やかで落ち着く森の香りが、心を鎮めてリラックスさせてくれます。
水に強く腐りにくい
コウヤマキは水に強く腐りにくいので、浴槽や風呂桶などの水回りのものによく使用されます。またその昔、木棺に活用されていたのも、こういった性質を持っていたからだと考えられています。
コウヤマキの使い方
古くからさまざまな用途で重宝されてきたコウヤマキですが、現在も多様な場面で利用され、活躍しています。定番の用途からちょっと意外な使い方まで、現代の活用方法をご紹介します。
コウヤマキの使い方①木材として
水に強いコウヤマキは、木材として漬物桶や味噌桶、風呂桶などに利用されています。しかし現在は数が減っているため、木材としては希少価値の高い存在になりつつあります。
コウヤマキの使い方②歯磨き粉やオーラルケアグッズ
コウヤマキのエキスは高い殺菌作用があり、歯周病の予防・改善に役立つといわれています。開発者は当初育毛剤を作る目的でコウヤマキのエキスを利用しようしましたがうまくいかず、その研究の副産物として見いだされたのが歯周病改善の効果でした。その結果、現在はコウヤマキのエキスを配合した歯磨き粉やオーラルケアグッズが販売されています。
コウヤマキの使い方③仏壇のお供え物として
特に関西では、お盆やお彼岸の際にコウヤマキの枝葉を仏壇にお供えする習慣があります。これは弘法大使が花の代わりにコウヤマキの枝を供えたことが始まりといわれており、コウヤマキがなかなか枯れにくく、いつまでも緑色を保っておけることから定着したと考えられています。
コウヤマキの使い方④庭木
コウヤマキは庭木としても知られています。生育はゆっくりしているものの、プランターで育てられる、比較的病害虫にかかりづらい、剪定があまり必要ないといった扱いの簡単さが人気の理由です。
まとめ
コウヤマキは日本固有の植物です。昔から幅広い用途で活用され、日本人の生活にとってとても大きな役割を担ってきました。現在では歯磨き粉やアロマオイルといった新たな用途も見いだされており、その有用性にますます注目が集まるでしょう。花言葉どおりの奥ゆかしいたたずまいは、人々の心を穏やかにしてくれますね。