スィートコーンとは?
スィートコーンの特徴
スィートコーンはイネ科トウモロコシ属のスイート種(甘味種)コーンと呼ばれる食用品種のトウモロコシです。でんぷん量が少なく糖質が豊富なため甘みが強いのが特徴です。最近の改良品種ではメロンより甘い特徴の品種も出てきて、一層人気が高まっています。スィートコーンと一口に言っても現在は種類も豊富で、特徴の違った数多くの品種が存在します。
スィートコーンは野菜?
スィートコーンは野菜なのか穀物なのかよくわからないという人も多いようです。野菜と穀物の定義がわかればスィートコーンはどちらにあたるのか考えやすいですね。
野菜とは?
「食用とする植物」はすべて野菜と呼ばれます。したがってスィートコーンは野菜です。現在日本の農林水産省はトウモロコシであるスィートコーンを野菜に分類しています。
穀物とは?
「でんぷん質を主体とする植物の種子」を食用とする物というのが穀物の定義で、主食にされる作物を言います。米・麦・トウモロコシは世界三大穀物と呼ばれているので、トウモロコシであるスィートコーンは穀物であるとも言えます。世界ではトウモロコシを主食にしている地域も少なくありません。
スィートコーンは野菜扱い(されることが多い)
分類上から言えば、「スィートコーンは野菜の中の穀物」と言うこともできますが、未熟種子のうちに収穫されるスィートコーンは「野菜」として店頭に並べられます。ちなみに、マクドナルドのCMでも「野菜もしっかり食べよう!」とスィートコーンが登場します。サラダなどに使われるヤングコーンやベビーコーンも野菜扱いです。
スィートコーンの旬な時期
スィートコーンの収穫時期は、国内では産地により4月後半~9月中旬と幅があります。春には収穫が始まる沖縄県と秋まで収穫する北海道とでは収穫時期も大きく違うためです。一般にはスィートコーンは夏の旬野菜と考えられ、海水浴場の砂浜で焼きトウモロコシを頬張った思い出のある人も多いのではないでしょうか。
スィートコーンは「収穫時期」が旬
生のスィートコーンは、収穫したてが一番甘味が強く、収穫後時間を置くほど甘味がだんだん落ちる特徴があります。糖分がどんどんデンプン質に変わってしまうためです。収穫時期から生のままで置き過ぎると美味しくなくなり日持ちしません。なのでスィートコーンは食べ頃である収穫時期が、そのまま旬の時期になるのです。
スィートコーンの産地
スィートコーンは北海道から沖縄まで日本全国で栽培されています。沖縄県はスィートコーンの産地としてはかなり例外的な収穫時期で、4月中旬から5月が旬の時期です。生産量も他の産地に比べると圧倒的に低いです。では高い生産量を誇る主な産地の都道府県はどこでしょうか?
スィートコーンの生産高日本一北海道
農林水産省の統計データ「全国のスィートコーン生産量ランキング」(2017年)によると、圧倒的な生産量で北海道が第一位になっています。なんと国内スィートコーンの40.7%を北海道だけで生産しているのです。2位は千葉県で国内シェアは7.3%。3位は茨城県(シェア6.6%)と続きます。北海道が2位の茨城県を大きく引き離している理由はなんでしょうか?
広大な農地
北海道には美味しいスィートコーンを作る名産地がたくさんあります。旭川の上川地方、富良野市、美瑛町、十勝平野地域、夕張市、森町など、スィートコーンの名産地は北海道の東西南北に満遍(まんべん)なく点在しています。これら名産地のスィートコーン畑は広大なため、高い収穫量をあげています。また大規模機械農業も可能となるため、生産効率も上がるのです。
気温差
北海道の名産地は朝夕の寒暖の差が激しい内陸性気候の地域が多いです。中でも典型的な内陸性気候の十勝平野地域は北海道のスィートコーン収穫量ランキングの上位を占めます。昼夜の寒暖差の大きい気候条件が、スィートコーンの糖度を上げ高い品質を保ってくれるのです。日中に光合成でつくられた糖分は、夜間の気温が低いおかげで糖分を消耗する呼吸活動が不活発になり、そのまま蓄積されて甘味を保つのです。
スィートコーンとトウモロコシは違うの?
トウモロコシの種類
トウモロコシは粒の性質や特徴により主に甘味種(スィートコーン)、硬粒種(フリントコーン)、爆裂種(ポップコーン)、軟粒種(フラワーコーン)、もち種(ワキシ―コーン)、馬歯種(デントコーン)など7種類に分類されています。他にも品種改良でたくさんの品種が開発されています。
硬粒種(フリントコーン)
粒全体に硬いでんぷんが付いています。粉末加工されて食用にされたり、家畜用飼料や工業用原料などにされます、デント種と並んで明治時代にアメリカから日本に入った品種です。
軟粒種(フラワーコーン)
粒全体が柔らかく、粉加工に適したでんぷんで形成されています。インカ帝国で育てられていた最古のトウモロコシ品種のひとつと言われています。
爆裂種(ポップコーン)
小粒でトウモロコシの中では最も硬い特徴を利用し、加熱すると膨張してはじけるポップコーンを作るのに利用されます。
もち種(ワキシ―コーン)
粒の表皮がワックスを塗ったような光沢があるので、ワキシ―コーンと呼ばれます。もち性のあるでんぷんを多く含み、もち米の代用加工原料になります。
馬歯種(デントコーン)
粒にくぼみ(デント)ができて馬の歯のような状態になることから、デントコーンと名付けられました。食用には向かず家畜用飼料やコーンスターチの原料に利用されます。
その他のトウモロコシ
他にもインディアンコーン、ジャイアントコーン、ポッドコーン、ホワイトコーン、ハイアミロースコーン、ハイオイルコーン、ハイスターチコーン、ハイリジンコーンなどたくさんの品種が開発されています。
スィートコーンの種類
甘味黄粒種(ゴールデンコーン)
粒全体が濃い黄色の黄金色(ゴールデンカラー)のスィートコーンです。ゴールドラッシュ、みわくのコーン、味来、おひさまコーン、ピクニックコーン、ミエルコーン、キラキラコーン、サニーショコラなどの品種があります。
甘味白色粒種(シルバーコーン)
粒全体が白く、小粒で光沢のあるスィートコーンです。。サラダに適し、ピュアホワイト、雪の妖精、ホワイトショコラなどの品種があります。
甘味バイカラー種(バイカラーコーン)
粒全体の色は黄色と白が3対1の割合で混ざっているスィートコーンです。ハニーバンタム、ピーターコーン、甘々娘(かんかんむすめ)、カクテルコーン、ゆめのコーンなどの品種があります。スィートコーンの中では最も甘みが強く、日本で一番多く生産される種類です。
スィートコーンの歴史
明治時代にアメリカからスィートコーン種のゴールデンバンタムが日本に入り、北海道開拓と同時進行で栽培が広まりました。第二次世界大戦後はスーパースイート種のゴールデンクロスバンタム、1960年代はハニーバンタム、1980年代はピーターコーンと甘味の強い新たな種類が登場し、おやつとしてのスィートコーン人気が高まりました。現在、トウモロコシといえばスィートコーンと言えるほど、日本人の食文化には欠かせない食材です。
まとめ
(上の写真は世界最古のトウモロコシ栽培が行われたインカ帝国階段状畑)
穀物から野菜に
夏が近づくと無性にトウモロコシ(スィートコーン)が食べたくなりませんか?それくらいトウモロコシは日本の夏の風物詩として定着しています。茹でてよし、焼いてよし、かぶりついた時の甘さが口いっぱいに広がると本当に幸せな気持ちになりますよね。
以前は穀物と分類されることも多かった
現在のスィートコーンの至福の甘さを享受できるまでにはなんと4000年以上の栽培の歴史があり、数えきれないほどの種類のトウモロコシが作り出されてきました。以前は米や麦同様、炭水化物の栄養価を重視する穀物とみなされることが多かったようです。
現在では、野菜へ分類されることが多い
今は食生活が豊かになったこともあり、健康生活に欠かせないビタミンやミネラル、コレステロールを下げる働きのあるのリノール酸などの栄養成分に注目が集まり、スィートコーンは野菜という見方が主流です。スィートコーンの歴史はまさに私たちの食文化の変遷を反映しているのですね。
出典:写真AC