葉にんにくの概要
葉にんにくは、簡単にいえば成長途中のにんにくの葉のことです。通常のにんにくは、球根にあたる部分が栄養をたくわえて肥えるまで、時間をかけて栽培します。それに対して、花芽がまだ柔らかい時期に収穫するのが葉にんにくです。若いうちに収穫するため、葉も茎も柔らかい食感を楽しめます。中華料理では、回鍋肉や麻婆豆腐などの炒め物に欠かせない食材として、古くから親しまれてきた食材です。
葉にんにくは中華料理では人気の高い食材なんだけど、日本ではあまり流通していなくて、知名度も今一つなんだ。
葉にんにくがあまり流通していない理由は、収穫時期が限られていることと、日もちが悪くて管理が厳しいことが原因とされていますよ。
葉にんにくの特徴
特徴①臭いが少なくて食べやすい
葉にんにくの特徴は、通常のにんにくやにんにくの芽と比べると臭いが少ないことです。これに加えて若い葉は柔らかいため、食感もよく食べやすい野菜となっています。「にんにくは嫌いではないが、臭いが気になるから食べられない」という方でも、安心して食べられますよ。
特徴②甘味が強い
葉にんにくの味の特徴としては、甘味が強いことがあげられます。もともとにんにくは糖度が高い野菜です。しかし臭いや辛味が強いため、甘味が隠れてしまっていました。一方で葉にんにくは通常のにんにくよりも臭いや辛味が弱いため、本来にんにくが持っている甘味を感じられるというわけです。
特徴③栄養価が高い
葉にんにくは栄養価が高い緑黄色野菜です。主要栄養分であり、臭い成分でもあるアリシンのほかにも、ビタミン類や食物繊維などの栄養成分を豊富に含んでいます。特にアリシンは疲労回復効果や抗菌作用を期待されている成分です。葉にんにくが夏バテによいといわれているのは、このアリシンを豊富に含んでいる点にあります。
アリシンは豚肉との相性がよい成分といわれているんだよ。豚肉は、疲労回復効果が高いといわれているビタミンB1が豊富なんだ。
アリシンには、ビタミン類の吸収をよくする効果があるといわれています。栄養的にも、豚肉と葉にんにくは相性がよいというわけですね。
アリシンは、にんにくやねぎなど香りの強い野菜に含まれている香気成分です。生の食品に含まれるアリインという成分が分解されることによって、アリシンとなります。特ににんにくに多く含まれており、疲労回復を助け、病気から体を守る働きがあります。
特徴④日もちしない
葉物野菜は傷みやすく、日もちしにくいのが難点といわれています。葉にんにくも例にもれず、やはり日もちが悪い野菜です。また葉が若く柔らかいうちに収穫しなければならないため、収穫時期も美味しい旬の時期も長くありません。
葉にんにくがあまり流通していないのは、日もちが悪くて管理が難しいという弱点があるからです。
日本での葉にんにくの知名度が低いのも、この弱点が大きく影響しているんだよね。
葉にんにくの人気レシピ3選
レシピ①回鍋肉(ホイコーロー)
回鍋肉は中華・四川料理の1つです。日本でも人気がある料理ですね。日本ではキャベツと豚肉を炒めて作るのが基本ですが、本場中国では葉にんにくと豚肉で作ります。じつは回鍋肉が日本に伝わった頃、日本では葉にんにくが流通していませんでした。そのため代替としてキャベツが使われるようになったのです。葉にんにくが手に入ったら、本場に近い回鍋肉に挑戦してみてはいかがでしょうか。
回鍋肉と同じく、人気が高い四川料理の麻婆豆腐も、葉にんにくがよく使用されているんですよ。
材料(2人分)
- 豚バラ肉:200g(厚切り)
- 葉にんにく:4本
- にんにく:1かけ
- ショウガ:3cm角
- ごま油:少々
- テンメンジャン:大さじ1
- 豆板醤:微量
- トウチジャン:小さじ2
- 紹興酒:大さじ1
- 日本酒:小さじ1
- 醤油:小さじ1
- 砂糖:小さじ2
- 鶏がらスープの素:小さじ1
作り方
- 合わせ調味料をあわせておく
- 葉にんにくは幅4cmの斜め切りにし、にんにくとショウガはみじん切りにする
- フライパンで豚肉を炒め、火が通ったら皿にあげておく
- にんにくとショウガ、葉にんにくをフライパンで炒める
- 続けて合わせ調味料を入れ、全体になじんだところで豚肉を戻す
- 仕上げにごま油を加えて完成
レシピ②醤油漬け
新鮮な葉にんにくは、生食もOKです。しかし臭いやクセがあるため、好き嫌いは分かれるでしょう。そのほかにも、生食に抵抗がある方には醤油漬けがおすすめです。ご飯のお供、冷ややっこに焼き肉のたれ、チャーハンの味付けや餃子の具材や味付けにも使えますよ。
材料(密閉容器1つ分)
- 葉にんにく:適量
- 醤油:刻んだ葉忍苦がかぶる程度
作り方
- 葉にんにくを細かく刻む
- かぶる程度の量の醤油に漬けて冷蔵庫へ入れる
- 一晩で完成。臭いがあるので、漬ける際の容器も保存する容器も、密閉できるものがおすすめ
レシピ③葉にんにくのヌタ
「ヌタ」は葉にんにくの主要産地でもある高知県伝統のタレのことです。刻んだ葉にんにくに、白みそや砂糖などの調味料を加えて作ります。ブリやハマチなどの脂分が多く、醤油をはじきやすい刺身に使うのが一般的です。辛い味が苦手な方の場合は、葉にんにくの半分をほうれん草に変えると、まろやかな味に仕上がりますよ。
材料(葉にんにく1本分)
- 葉にんにく:1本
- いりごま:大さじ1/2
- 白みそ:100g
- 柚子酢:90g
- 砂糖:100g
作り方
- 葉にんにくは細かく刻んでおく
- いりごまをすりこぎですりながら、葉にんにくを少しずつ加えていく
- 白みそを加えて、さらにすり混ぜる
- 酢と砂糖を加え、すべての材料がきれいに混ざってトロリとしたら完成
葉にんにくに似ている野菜との違いとは?
葉にんにくとにんにくの芽との違い
葉にんにくと混同されやすい食材に「にんにくの芽」があります。「茎にんにく」とも呼ばれているこの食材は、正確にはにんにくの芽ではなく、花茎を収穫したものです。それに対して葉にんにくは、名前の通りにんにくの葉を指します。つまり「葉にんにく」と「にんにくの芽」は同じにんにくでも「若葉」「花茎」というふうに食べる部分が違う食材なのです。
両種は食感も違うよ。にんにくの芽は花茎を食べるから硬めの食感なんだけど、若い葉を食べる葉にんにくは、柔らかめの食感なんだ。
葉にんにくとニラとの違い
葉にんにくは薄く細長い葉や、白い根元という外見の特徴が、ニラに似ています。ただし、両種はまったく別の野菜です。大きな違いは再生栽培ができるかどうかの違いでしょう。ニラは再生栽培が可能ですが、葉にんにくは再生栽培が不可能です。
葉にんにくは、一度収穫した種から再び葉が成長することはありません。このため再生栽培は不可能です。
葉にんにくのおもな生産地
葉にんにくのおもな生産地は、にんにくの名産地でもある青森県が有名です。このほか、千葉県や沖縄県、高知県などでも生産されています。成長途中で収穫するため、比較的温暖な場所で栽培する傾向があります。ちなみに、青森県は「福地ホワイト」というにんにくの品種が多く栽培されていますが、この品種は球根を肥やして収穫する普通の品種です。葉にんにくとして収穫することはありません。
にんにくの品種のなかには、葉にんにくとして栽培・収穫することに特化した「葉にんにく専用品種」というのがあるんだよ。
葉にんにくの旬の時期
葉にんにくの旬の時期は、11月~3月です。葉の長さは30cm~40cmほどで、花芽が柔らかいうちに収穫します。農家では葉にんにくの専用品種で栽培していますが、家庭菜園で育てる場合は、通常のにんにくの品種でもOKです。葉にんにくの栽培場所や環境はにんにくと同じですが、球根を肥やす必要がないため、栽培場所が多少狭くても問題ありません。
葉にんにくは密植させると茎が太くなりにくいので、狭い場所のほうがよいくらいなんですよ。
まとめ
葉にんにくは日本ではあまりなじみがありませんが、栄養豊富で食べやすい野菜です。豚肉との相性もよいため、特に夏バテが心配なときのスタミナ料理にピッタリでしょう。クセが少なく、ほかの食材とあわせても、美味しい料理に仕上がりますよ。上手に使いこなして、疲れ知らずの健康な体作りに役立ててくださいね。
出典:写真AC