秋は登山にぴったりのシーズン
秋といえば紅葉狩りもすてきですが、この時期にしか見られない山野草や花が楽しめます。比較的寒さに強く、冬にかけて咲いている植物が多いのがこの時期の特徴です。植物の種類によっては、山に登らなくても海岸や道端で見つけられるものもありますよ。
秋の登山で見られる高山植物①~⑤
①リンドウ
リンドウは北海道~九州にかけて生息しており、青色の小さな花が特徴的です。平地や砂浜に自生していることがあるため、見つけやすいでしょう。園芸品種が出回っているので、秋~冬の花壇を彩るのにもぴったりの花です。
科目 | リンドウ科リンドウ属 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 20~80cm |
花の色 | 青色、青紫色 |
開花時期 | 9~11月 |
②イタドリ
イタドリは北海道の南部と本州~九州に生息しています。150cmほどの草丈に、白い小さな花がいくつも咲く姿が特徴的です。夏~秋にかけて見頃を迎えますが、若い芽は春の山菜として食用できます。山道のほか川沿いや土手でも見られるでしょう。
科目 | タデ科イタドリ属 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 50~150cm |
花の色 | 淡い緑色 |
開花時期 | 7~10月 |
③オミナエシ
オミナエシは、深く切り込みが入った羽の形に似た葉と、小さな黄色い花がいくつも集まったような姿が特徴的です。日本では、秋の七草として奈良時代より親しまれてきました。沖縄県をのぞく日本各地の平地や、山に近い海岸で自生しています。
科目 | オミナエシ科オミナエシ属 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 60~100cm |
花の色 | 黄色 |
開花時期 | 8~10月 |
オトコエシとの違い
オミナエシに似た植物に「オトコエシ」があります。両者はとてもよく似ていますが、花が白く茎が太くて固いのがオトコエシの特徴です。また、果実に翼がついているのもオトコエシの特徴なので、その違いを見比べてみるのも面白いでしょう。
④ハッポウアザミ
ハッポウアザミは、本州の八方尾根(はっぽうおね)にのみ生息するアザミの仲間です。8~10月にかけて、赤紫色の花をうつむいたように咲かせます。葉には細かい切れ込みがはいり、トゲがついていますので、触れる際はけがに気をつけてください。
科目 | キク科アザミ属 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 10~80cm |
花の色 | 赤紫色 |
開花時期 | 8~10月 |
⑤イソギク
イソギクは、伊豆半島や房総半島の海岸付近でも見られる山野草です。小さなポンポンのような花が特徴的で、葉には産毛が生えています。観賞できる期間は10~11月頃なので、山などに探しに行くときには温度調整しやすい服装で出かけましょう。園芸品種が出回っているため、自宅でも栽培が楽しめますよ。
科目 | キク科イソギク属 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 30~40cm |
花の色 | 黄色 |
開花時期 | 10~11月 |
秋の登山で見られる高山植物⑥~⑩
⑥オケラ
オケラは、本州~九州にかけて生息する、房のような花が印象的な高山植物です。花の見頃は9~10月頃ですが、若い芽は春の山菜として食べられます。日当たりのよい山地やひらけた草原などに、自生しているので見つけやすいでしょう。
科目 | キク科オケラ属 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 60~80cm |
花の色 | 白色、薄赤色 |
開花時期 | 9~10月 |
⑦ヤマトリカブト
ヤマトリカブトは、関東や中部など本州の一部にのみ生息します。青紫色の花が特徴的で、葉の形がヨモギに似ています。毒を含んでいる植物なので、決して持ち帰ったり、口にしたりしないように気をつけてください。
科目 | キンポウゲ科トリカブト属 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 80~150cm |
花の色 | 青紫色 |
開花時期 | 9~11月 |
⑧アキノキリンソウ
アキノキリンソウは小さな花がいくつも集まり、泡のように見える姿が特徴的です。北海道~九州にかけて生息していて、日当たりのよい山地や海岸付近で見られます。ベンケイソウ科のキリンソウによく似ていますが、開花時期が違うことや花が筒状でやや丸みを帯びていることが見分けるポイントです。
科目 | キク科アキノキリンソウ属 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 30~80cm |
花の色 | 黄色 |
開花時期 | 8~11月 |
⑨ワレモコウ
ワレモコウは日当たりのよい草原のほか、海岸付近でも見られる山野草です。赤茶色の房のような花が特徴的なワレモコウですが、これは花ではありません。花のように見えるところはがくで、本当の花はがくの中心にあります。2mm程度ととても小さいので、よく観察してみてくださいね。
科目 | バラ科ワレモコウ属 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 20~180cm |
花の色 | 赤茶色 |
開花時期 | 7~10月 |
⑩フユイチゴ
フユイチゴは木苺の仲間です。葉や茎は細かい産毛でおおわれていて、地をはうようにつるを伸ばす姿が特徴的です。9~10月に白い花を咲かせ、晩秋~冬にかけて熟す赤い実は食べられます。関東より西の地域の山地や林道でよくみられますが、山形県内においては危急種に指定されており、絶滅が懸念される植物でもあります。
科目 | バラ科キイチゴ属 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 約30cm |
花の色 | 白色 |
開花時期 | 9~10月 |
登山で見られる植物の特徴
特徴①高山植物
日本の山に生息している植物はおもに高山植物と呼ばれ、高木が生息できない森林限界地域に自生しています。高山植物は寒暖差が大きくて日当たりがよく、風が強いことなどが生息の条件です。標高が高いところに生息している高山植物の多くは、夏が終わる頃には枯れてしまいます。
特徴②山野草
山野草(さんやそう)は、登山道の入り口などに自生している植物です。草丈は低く花も小さい傾向がありますが、観賞用として人気が高く、ランやサクラソウも山野草のひとつです。山野草は平地に生息していることが多く、年間を通してさまざまな種類の植物が楽しめます。山に生息している植物ということから、山野草のことも高山植物と呼ぶ場合があります。
特徴③レッドリストに指定されている
高山植物や山野草のなかには、温暖化の影響や動物による食害が原因とされ、レッドリスト(絶滅危惧種)に指定されている種類の植物があります。美しい植物を見かけても引き抜いて持ち帰ったり、踏みつけたりするのはやめましょう。
登山で秋の植物を楽しむための注意点
登山は、景色や植物を眺められて気分もリフレッシュできますが、危険が潜んでいます。安全に楽しむためにも、服装や装備、山登りの際のマナーなどを確認しておきましょう。無理はせず、ときには引き返す勇気も大切ですよ。
ボタニ子
注意点①秋の登山は重ね着がベター
秋の登山は、夏に比べて気温の変化が激しいため、長袖の服やジャンパーを重ね着するのがおすすめです。新しく買いそろえなくても、通気性のよいTシャツに薄手の長袖シャツなど手持ちの衣装で代用可能です。歩いている途中で、暑さや寒さを感じた場合は服を着脱して調整しましょう。
ボタニ子
トレッキングシューズやスニーカーなど、必ず歩きやすい靴で山登りしましょう。
注意点②こまめに休憩をとる
秋の山は風が心地よく、快適と感じることもあるでしょう。しかし、体は思っている以上に汗をかきます。飲み物を持参して、こまめに休憩をとりましょう。手ぶらで散策できるような低い山でも、飲み物は持ち歩いてください。お菓子やおにぎりなど、ちょっとした軽食も持って行くとよいですよ。
注意点③ゴミは持ち帰る
登山のために持ち込んだお弁当やペットボトルのゴミは持ち帰りましょう。ゴミを投げ捨てたり、食べ残しを放置したりすることは、環境破壊や危険動物に遭遇するリスクにもなります。できるだけゴミがでないように、持ち物を工夫することも大切です。
ボタニ子
そのほかにも、日没前には下山する、立ち入り禁止区域には絶対入らないなどの山のルールは守りましょう!
秋の登山で高山植物を楽しもう
秋の登山はこの時期ならではの植物が見られたり紅葉狩りができたりと、春や夏とは違った楽しみがあり、軽い運動をするのにもぴったりです。しかし、山の天気は変わりやすく、上に登るにつれて気温も下がってきます。山登りに適した服装で、無理をせず楽しんでくださいね。
すれ違った人とあいさつするのも大切なマナーです。