何かの形に見える種を持つ植物
①ヒシ
撒菱(マキビシ)の元祖
ヒシは水面に浮く水草の仲間で、沼地などを覆いつくすことで知られています。その種であるヒシの実は、大きさ5cmほどの独特の形をしており、日本では忍具である「撒菱」、西洋では「caltlop」という名で、敵の歩行妨害や足止めをする戦術の道具として使用されてきました。
悪魔のような実
ヒシの実の別名には「devil pot(悪魔の莢)」「devil nut(悪魔の実)」「goat head(ヤギの頭)」など、悪魔を意味する名称があります。特徴的な形もさることながら、緑色の果皮が取れて現れる種が暗褐色で、より悪魔らしいイメージがあるのかもしれません。
ボタ爺
見た目は怖いが食べられるんじゃよ。栗や芋に似た食味でクセもなく栄養も豊富じゃ!
ボタニ子
別名は「ウォーターマロン」って言うんだって。悪魔のような実は、じつは天使の味だったりするかもね。
②ニンジン
虫の集団のような種
ニンジンの種は、複散形花序の花の先端に大量に実ります。細かい毛がたくさんついた姿はまるで虫が集まったようですね。この毛には水分を取り込んで保持する役割がありますが、一般的な種は、機械でまきやすいように採種の際に毛が落とされた状態で販売されています。
繊細で美しいニンジンの花
レースフラワーを思わせる繊細な花序が美しいニンジンの花は、セリ科の二年草です。品種はおもに、可食部の長さが20cm前後の短根種(西洋種)と70cm前後の長根種(東洋種)に分類されており、品種改良されたさまざまなニンジンが世界中で栽培されています。
ボタニ子
市販されているニンジンの種の発芽率は70%ぐらいなんだよ。土が乾燥してると発芽しないから注意してね。
ボタ爺
発芽率をあげるには一晩水に浸けたり、株間をつめる「共育ち」をしたりすることで土を持ち上げる力を強化するのも有効じゃな。
羽毛のついた種を持つ植物
①クレマチス
長い羽毛の付いた種
クレマチスの種は、オタマジャクシのような果球から羽毛のついたひげを伸ばした形状です。この特徴のある羽毛が風に乗って種を拡散させ、元の花から遠く離れた場所で発芽します。確実に採種したい場合は、種が茶色に変色するまで株に通気性のよい袋をかけておくとよいでしょう。
つる植物の女王
つる植物の女王とも呼ばれるクレマチスは世界中に数百種もの品種を持つ、愛好家の多い植物です。園芸店で購入した株を植え付けるのが一般的で、種まきの場合は発芽までに半年~1年かかるといわれています。移植を嫌うため、クレマチスにあった環境を整えてから種をまきましょう。
ボタニ子
大きな毛糸玉みたいと思ったけど、たくさんの種が集まった形なんだね。
ボタ爺
種をまいてから花が咲くまでに2年かかるものもあるんじゃよ。いつかは種からの栽培に挑戦してみたいものじゃな。
②ガガイモ
扇のように広がる羽毛
ガガイモの袋果(たいか)は舟形で長さが10cmと大きく、全体の形がイモのようにみえることが名前の由来です。種についた羽毛は艶やかで軽いため、昔は綿の代わりに使用されていました。乾燥させた種は蘿摩子(らまし)と呼ばれ、薬効があることから民間療法に用いられています。
ヒトデのような花
ガガイモの花は、ヒトデのような肉厚の花弁で、全体に産毛が生えているのが特徴です。茎を切ると出る白い乳液には解毒作用があり、民間薬として使われてきた歴史があります。また若い芽はクセがなく食べられます。天ぷらやおひたし、炒め物などにして食べるのがおすすめです。
ボタニ子
種についた羽毛がこんなに大きかったら、遠くまで飛んでいきそうだね。
ボタ爺
見た人が幸せになれるという謎の生物「ケサランパサラン」の正体という説もあるんじゃよ。
③センニンソウ
仙人のヒゲのような羽毛
センニンソウの名前は、果実についた羽毛が仙人のヒゲを思わせる形状をしていることに由来しています。このヒゲ状の花柱の長さは3cmほどで、ほかの植物の種についた羽毛と同様に、風に運ばれやすくする役割を担っています。
センニンソウは毒草?
センニンソウは原種系クレマチスのひとつです。毒性があり、茎や葉の断面から出る汁や花粉に触れると皮膚炎を起こします。別名は「ウマクワズ」で、毒性があることで牛や馬もセンニンソウを口にしないことが由来です。うっかり素手で触れないように気をつけましょう。
ボタ爺
毒性はあるが、花がみごとで芳香もあるんじゃ。通信販売などでの取り扱いがあるようじゃよ。
ボタニ子
剪定の際には手袋をして気をつければ大丈夫よね。
ボタニ子
最後のページでは、羽根のついた種をご紹介します!
出典:写真AC