イチイと似ている樹木
イチイと見た目や名前がよく似ていて、間違われることもある植物が複数あります。ここでは、そんな植物たちを紹介しましょう。
キャラボク(伽羅木)
キャラボク(伽羅木)はイチイの変種です。そのため葉の形や赤い実をつけること、生長が遅く垣根などに利用されることなど、特徴はよく似ていますが、イチイよりも樹高が低く成長しても2mから4mほど、樹形が異なっていることから簡単に見分けられます。
名前の由来
名前の由来は、かすかな香りがあるところが、香木のキャラ(伽羅)に似ているからです。イチイよりも耐暑性が強くて樹高が低いことから、庭木としてはイチイよりも多く用いられています。
キャラボクの基本データ
学名 | Taxus cuspidata var.nana |
科名 | イチイ科 |
属名 | イチイ属 |
別名 | ハイキャラボク、ダイセンキャラボク |
分類 | 常緑針葉樹(低木) |
特性・用途 | 庭木、垣根 |
カヤ(榧)
カヤは東北地方から屋久島にかけて分布している常緑針葉樹です。日陰や大気汚染に耐性があり、土の性質も選ばないという丈夫さから、公園や緑地にも利用されています。葉はイチイに似ていますが、イチイが柔らかくチクチクしないのに対して、カヤの葉は先が鋭く触るとチクチクします。カヤは木材としても優秀で、独特のツヤと芳香があり、樹齢300年以上のカヤで作った碁盤や将棋盤は最高級品と珍重されています。
カヤはイチイと同じく長寿ですが非常に生長が遅いです。そのためカヤの大木で作った碁盤や将棋盤は最高級品とされています。
宝物みたいに大事にされるのは、品質の良さだけでなく、希少さもあるんだね。カヤの木材はその美しさから、彫刻などの工芸品にもよく用いられているよ。
種は食用になる
イチイの種は有毒なので食べられませんが、カヤの種は食べられます。ただし、そのままではアクが強くてヤニ臭いので、数日アク抜きしてから炒って食べます。また、果実からは油が取れます。カヤの油は灯り用や整髪料、虫よけなどに利用されていました。
カヤの基本データ
学名 | Torreya nucifera |
科名 | イチイ科 |
属名 | カヤ属 |
別名 | ホンガヤ、シロガヤ |
分類 | 常緑針葉樹(高木) |
特性・用途 | 公園、シンボルツリー、木材(碁盤、将棋盤、工芸品) |
イチイガシ(一位樫)
イチイガシは地方によっては「イチイ」と呼ばれている樹木です。ただし似ているのは名前だけと言ってもよいでしょう。まず、種類が全然違います。イチイが針葉樹なのに対してイチイガシは広葉樹です。生長は遅いものの、育てば30m以上の大木になるためか、庭木に利用されることはあまりありません。西日本の寺社仏閣や公園で多くみられます。
どんぐりは生食OK
秋にはどんぐりの実をつけますが、アクが少ないので生で食べることが可能です。実際に縄文時代から食用とされていたことが、遺跡調査などで判明しています。
木材としてはかなり優秀
イチイガシの木材は、堅くてしなやかで折れにくいことから船の櫓(ロ)に使用されていました。これが別名の「ロガシ」の由来です。優れた性質から船の櫓以外にも建築材や器具材として古くから使用されており、遺跡からはイチイガシの木材もよく出土しています。
イチイガシの基本データ
学名 | Quercus gilva |
科名 | ブナ科 |
属名 | コナラ属 |
別名 | イチガシ、ロガシ、イチイ |
分類 | 常緑広葉樹 |
特性・用途 | 神社、寺院、公園、木材(建築材、器具材) |
クヌギ(櫟)
「櫟」の字は「クヌギ」とも読む
イチイのもう一つの漢字表記とされる「櫟」は、クヌギとも読みます。クヌギはブナ科コナラ属の落葉高木で、櫟以外にも椚、橡、功刀、檞と、非常に漢字表記が多いです。イチイとはまるで違う植物なのに、なぜ同じ漢字表記があるのかというと、実は「櫟」とはイチイのことではなく、クヌギと同じブナ科コナラ属のイチイガシのことであると言われています。
樹液は虫たちの好物で成長スピードが早い
クヌギは幹の一部から樹液が出ていることがあり、樹液目当てにカブトムシやクワガタムシが集まることで有名です。その他の特徴として生命力が強く、生長スピードも早いことが知られています。植えて10年ほどで木材として使用でき、伐採しても20年ほどで元通りになります。この性質から建築材や器具材以外にも、薪や椎茸栽培の原木として利用されています。
クヌギの基本データ
学名 | Quercus acutissima |
科名 | ブナ科 |
属名 | コナラ属 |
別名 | ツルバミ、クニキ、クノキ |
分類 | 落葉広葉樹 |
特性・用途 | 公園樹、器具材、船舶材、薪炭材、椎茸の原木 |
まとめ
垣根・神木・木材・果実酒などなど、さまざまな場面で活躍するイチイは、まさに自然の宝物といってもよい樹木です。有毒植物でもあるので、取り扱いには注意が必要ですが、ある意味「丁寧に扱うように」という自然からの忠告でしょう。敬意をもって、大切に扱いましょうね。
出典:写真AC