漢方薬としての葛
葛の根は食用だけでなく、生薬として利用されてきました。根を乾燥させた葛根(かっこん)と花を乾燥させた葛花(かっか)として古くから薬としての効能が知られていたのです。現在でも、葛根湯は感冒薬として販売されていますが、その主薬として葛の根が使われます。
葛根
生薬の葛根は葛の根をきれいに水洗いして、外皮を取り除き、板状またはサイコロ状に切り、天日で乾燥させたものです。風邪薬として知られる葛根湯(かっこんとう)の主薬となり、寒気や熱を取りながら体をあたため、喉の渇きや下痢に効果を現します。
「葛根湯」は、発熱がなくても、うなじや背中が緊張しているようなときに用いられます。慢性頭痛、なかでも緊張型頭痛や、肩こりの治療でもよく処方される薬です。「葛根湯」は、体を温めることでこれらの症状をやわらげます。
葛花
生薬葛花は夏の終わりに咲く葛の花を乾燥させたものです。房状の花を採取して風通しの良好な場所で素早く乾燥させます。甘い花の香りに誘われてか、花には虫がついていることが多いので注意が必要です。煎じて二日酔いに予防などに用いられます。
葛のその他の利用法
①繊維として
葛布は石器時代葛の遺跡から発見されるほど古くからある利用法です。つるや繊維を織り布として利用していたのです。その他家畜の飼料や若葉を葛葉茶として利用されてきました。
②鑑賞用として
万葉集には「萩の花、尾花(をばな)、葛花(くずはな)、なでしこの花、をみなえし、また藤袴(ふぢはかま)、朝顔の花」(山上憶良)と秋の七草を詠むなど、歌や絵画などの芸術にも葛が多数取り上げられています。身近だけれど心を動かされる植物だったのです。
③飼料用・装飾用として
北アメリカでは、1876年のフィラデルフィア万博で日本から持ち込まれ、飼料用・装飾用として展示されたことをきっかけに利用されましたが、有害植物、侵略的外来種として指定されてしまいました。生命力が強くみるみる繁殖するので、雑草として扱われる一面も持っています。
まとめ
今では葛根湯の原料としての利用が一般的になりましたが、古くから日本人の生活に深く関わってきた葛。今では貴重な高級食材でもあり、私たちの健康をやさしく守ってくれる心強い植物です。
出典:筆者撮影