ブドウにつきやすい病気・害虫
ブドウは、比較的病気にかかりやすく害虫も発生しやすい植物です。放っておくと株ごと枯れてしまうこともあるため、栽培中はよく注意して観察しましょう。病害虫を防ぐポイントを押さえれば、丈夫なブドウに育ちます。
病気
べと病
べと病は葉の表側に病斑が発生し、裏側に白っぽいカビが生える病気です。そのままにしておくと葉を落として、果実も育たなくなってしまいます。9月~10月に雨が続くと病気が発生しやすくなるため、過湿を避けるのが大切です。べと病の防除として、薬剤散布したり、病気になって落ちた葉を処理したりしてください。
褐斑(かっぱん)病
褐斑病は、葉に小さい斑点がついて急速に進行し、黒い大きな斑点となって葉を枯らす病気です。感染力がとても強いため、見つけたらすぐに取り除きましょう。発生する時期は6月頃です。キャンベル・アーリーやデラウェア、巨峰、ナイアガラなどの品種がかかりやすい病気といわれています。
黒とう病
黒いシミが葉や果実につく黒とう病は、ブドウの生育も阻害する病気です。病斑から穴が開き、新梢を黒く枯らしてしまうこともあります。病気になったら初期のうちに薬剤で対処することが大切です。
害虫
ブドウトラカミキリ
ブドウトラカミキリは、新梢を枯らしてしまう害虫です。4月ごろから幼虫が枝を食害するため、産卵期の8月~9月、または休眠期の2月~3月にきちんと駆除しておきましょう。また剪定のときに、被害にあったと思われる褐変した枝を切り落として、そこからの害虫発生を防除してください。
コナカイガラムシ
コナカイガラムシは繫殖力が強い害虫です。それだけでなく、排泄物やスス病などの二次被害によっても急速に株を弱らせます。寄生する場所は、葉の裏側や新梢の基部など見つけにくいため注意しましょう。コナカイガラムシを見つけたらすぐに捕殺または薬剤で駆除し、定期的な薬剤散布で防除してください。
ハダニ
ハダニは、葉裏で汁を吸って生育を悪化させる害虫です。とくにハウス栽培するブドウにつきやすい害虫として知られています。5月半ばに外から侵入してきて増殖し、7月~8月が発生のピークです。対処は葉裏に散水するよりも、薬剤の駆除が効果的ですよ。
ブドウの植え替え
鉢植えのブドウは、植えたままにしていると根が回って通気性が悪くなってしまいます。そのため、2年~3年に1回は植え替えましょう。植え替えの適期は、落葉期にあたる11月~3月です。ひと回り大きめの鉢を用意したら、まずは苗を傷つけないように取り出します。それから根鉢をほぐして、鉢にあわせて根を切り落としてください。そこからは植え付けと同じ手順です。
ブドウの増やし方
種から育てる
収穫したブドウを食べたあとに種を残しておくと、種からブドウを増やせます。植え付けの適期である10月~12月になるまで、乾燥させないでおくのがポイントです。種は湿らせたキッチンペーパーに包んで、冷蔵庫の野菜室など冷暗所で保管しておきましょう。適期に植え付けてきちんと管理すると、春には発芽しますよ。
挿し木
ブドウの挿し木の適期は3月です。挿し穂は11月~12月に15cm~25cmで切って、ビニール袋や新聞などで覆って乾燥を防ぎながら冷蔵庫で保存します。挿し木にする前日に挿し穂を1日吸水させ、切り口は斜めに切って発根促進剤に付けてください。ピートモスと鹿沼土を同量で配合した苗床に挿します。芽が上を向いているほうを上にして、下側を挿してくださいね。最後に殺菌剤を散布しましょう。
接ぎ木
準備
ブドウの接ぎ木にはいろいろな種類がありますが、一般的な方法なら初心者でもチャレンジできます。接ぎ木する適期は4月ですが、11月~12月に接ぎ穂と台木を準備しておきましょう。接ぎ穂と台木は15cm~25cmほど切り、ビニール袋や新聞などで覆って乾燥を防ぎながら冷蔵庫で保管しておきます。
手順
接ぎ穂と台木は、接ぎ木する1日前に吸水させ、苗床も水を染みこませましょう。台木は芽かきをします。接ぎ穂は40度~45度の角度で斜めに切り、切り口の反対側を薄めに3cmほど削いでください。台木は中央に2cmほどの切れ込みをいれます。接ぎ穂と台木の切り口を重ねますが、このとき接ぎ穂と台木の枝の太さがそろうのが理想的です。最後に接ぎ木テープでしっかりつなぎ目をとめます。
ブドウの品種
ブドウの種類は、大きく分けて欧州種、米国種、欧米雑種の3つです。欧州種はワイン醸造向きで、米国種と欧米雑種は生食向きといわれていますが、米国種にもワインやジュース用につかわれる品種があります。
キャンベル・アーリー
キャンベル・アーリーは米国種の黒ブドウで、育てやすい品種の代表格です。たくさん生産できるため、ジュースやワインとしても利用されています。果実は5~7gほどの中粒で、濃い紫色の厚めの果皮は剥けやすく、果肉は甘酸っぱくジューシーです。また、フォックス臭という独特な香りがあります。現在、国産ブドウで生産量第1位の巨峰も、じつはキャンベル・アーリーが元となって生まれた品種ですよ。
ナイアガラ
ナイアガラは米国種で、中粒の白ブドウ品種です。黄緑色の果皮のなかに、皮離れがよくて甘くジューシーな果実が入っており、強く独特な香りを放ちます。果皮の薄さから長距離移動には向かず、生食用としては産地付近に出回るくらいで、ジュースや白ワインに加工されるのが一般的な品種です。
デラウェア
デラウェアは、日本でも種なしブドウとして広く知られている黒ブドウ品種です。デラウェア自体は種ができる品種ですが、ジベレリン処理という方法で種の発生をおさえています。果実は小粒ですが、甘みが強く、やさしい香りと爽やかな酸味があり、安価でおいしいブドウです。鉢植え栽培でも人気がありますよ。
巨峰
欧米雑種の巨峰は、ブドウの王様と称されるほど果実が大きく、高い人気を誇る黒ブドウです。10g~15gほどの大粒の果実で、黒っぽい紫色の果皮のなかに引き締まったジューシーな果実が包まれています。近年では本来の種があるタイプよりジベレリン処理で種なし加工をされた巨峰のほうが一般的です。「石原センテニアル」という品種名をもっていますが、「巨峰」という商標登録された名前のほうが世に浸透しました。
まとめ
ブドウの栽培は、広い場所がなくても家庭で鉢植えとして楽しめます。長く栽培するには、剪定や肥料、時期ごとの手入れが必要です。また、ブドウは病害虫の被害も受けやすいため、株の状態をよく観察しましょう。品種によっても、栽培難易度や果実の味わいがちがいます。ぜひ、好みにあったものを見つけて、たくさんのおいしい果実を収穫してください。