春菊の概要
春菊は、地中海沿岸を原産とするキク科シュンギク属の植物です。春に花を咲かせることと、葉の形が菊に似ていることから、春菊と呼ばれるようになりました。独特の香りと風味から、鍋料理や天ぷらのネタとして親しまれています。最近ではアクが少なく、サラダとして食べられる品種も登場しました。「東京産の春菊は苦いが、広島産の春菊は甘い」という風に、産地によって味が異なるのも春菊の大きな特徴です。
ヨーロッパでは観賞用のイメージが強い
日本では食材としてのイメージが強い春菊ですが、実は食用として栽培するのは東アジアだけです。ヨーロッパなどでは綺麗な黄色い花をつけることから、観賞用植物として扱われてきました。ただし、最近では和食の影響もあって、徐々にですが料理に使われる機会も増えています。
春菊の特徴
春菊の栄養素
春菊は非常に栄養豊富な緑黄色野菜です。βカロテン、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄分、カリウムなどを多く含んでいます。特にβカロテンの含有量は、ホウレン草や小松菜にも匹敵します。また、春菊の独特の香り成分であるペリルアルデヒドには、自律神経に作用し胃腸の調子を整え、咳を鎮める効果があります。
春菊の品種
春菊の品種は葉の切れ込み具合などによって、大きく4つに分類されます。
- 大葉種:葉幅が広く肉厚で、切れ込みが少ない品種群。香りは弱めで、クセの少ない味と柔らかい食感が特徴です。四国や九州で多く栽培されています。
- 中葉種:葉の切れ込みは大葉種と小葉種の中間になる品種群。香りが強く、株立ち型と株張り型の2つのタイプがあるのが特徴です。全国で最も多く栽培されている品種でもあります。
- 中大葉種:大葉種と中葉種両方の特徴を併せ持つ品種群。奈良県北部の農家に受け継がれてきた品種で、奈良県で選抜された物が原形となって全国に広まりました。「中村系春菊」とも呼ばれています。
- 小葉種:葉の切れ込みが深くて細かい品種群。とても香りが強い品種ですが、収穫量が少ないため、あまり栽培されていません。
春菊と菊菜の違い
春菊と菊菜は同じ物?
結論から言うと春菊と菊菜は同じ物です。菊菜という呼び名は、主に関西で使われています。また、奈良県で栽培されている春菊の中大葉種を、市場では「大和きくな」と呼んでいます。菊菜以外にも、関西では春菊のことを「新菊(しんぎく)」と呼ぶことがあります。
春菊の育て方
ここからは春菊の育て方を紹介します。種まきの時期が年2回あったり、収穫方法が品種によって違ったりと、春菊の栽培方法には注意する点がいくつかあります。しっかり覚えて美味しい春菊を家庭で育て上げましょう。
一年間の栽培カレンダー
作業 | 時期 |
種まき(春) | 3月~5月中旬 |
収穫(春) | 6月 |
種まき(秋) | 8月~10月上旬 |
収穫(秋) | 11月~1月 |
春菊の大まかな管理スケジュール表です。表を見ても分かるように、春菊は春と秋の年2回種まきができます。ただし、栽培に適した時期は、地域やその年の気候条件などによって、ズレが生じることが珍しくありません。この表に示した適期は、あくまでも参考程度にとどめてください。地植えやプランター栽培の種まきや間引き方法、肥料や水やりなど詳しい栽培方法については、下記に紹介しています。
春菊栽培の注意点
中葉種は品種によって収穫方法が異なる
春菊の品種の中で最も多く栽培されている中葉種は、「株立ち型」と「株張り型」と2つのタイプに分かれています。そしてこの2つのタイプは特徴だけでなく、収穫方法も違います。詳しい収穫方法については下記をご覧ください。中葉種の春菊を栽培する際は、どちらのタイプなのか事前に確認しておきましょう。
連作障害に気をつける
春菊は同じ場所に植え続けていると、連作障害を起こすことがあります。特に畑など地植えで育てる場合、同じ場所での栽培間隔は、最低でも1年から2年ほどあけておきましょう。
次のページでは、種まきの方法を紹介するよ!
春菊の育て方その①:種まきの方法
春菊の種まきは、春と秋の年2回あるのが大きな特徴です。畑で栽培することが多い春菊ですが、プランター栽培もできます。春の種まきで畑で育てる場合は、栽培ポットで育苗してから畑に植え付けるのもOKです。秋の種まきは早めに行うようにすると、うまくいきます。プランター栽培も地植えも、種まき後は数回間引きを行う必要があるので、混み合わないように注意しましょう。
間引いた芽はどうする?
間引いた芽は捨てずにベビーリーフとして利用しましょう。味噌汁やサラダにすると美味しいですよ。
鉢・プランター栽培の場合
春菊は種まき後、3回ほど間引きます。最終的に、10号以上の鉢の場合なら3株から5株、60cmサイズのプランターなら8株から10株ほど残るように調整しましょう。以下が、鉢・プランター栽培の種まき方法です。
- 容器に鉢底石を敷き、土を入れます。土は市販の野菜の培養土でOKです。
- 底から水が流れ出すくらいたっぷりと水をやり、土を湿らせます。
- 土に溝を作ります。2列で幅は10cmから15cm、深さは5mmから8mmが目安です。
- 種をまきます。間隔は1cmから2cmほどで、筋まきにするのが基本です。まき終わったら、薄く土を被せます。ただし、風のない場所なら土を被せなくても大丈夫です。
- 発芽するまでは、土が乾かないように管理します。
- 本葉が1枚から2枚ついたら、一回目の間引きです。生育の良い株を残し、株同士の間隔が大体3cmになるように間引きます。
- 本葉が4枚から5枚になったら、二回目の間引きです。今度は5cmから6cm間隔で、生長の良い株を残して間引きます。
- 草丈が8cmほどに生長したら、三回目の間引きです。生長の良い株を残して間引きます。株同士の間隔が、6cmから10cmくらいになるように調整してください。間引いた後は、株に土を寄せておきます。
地植えの場合
畑など地植えにする場合は、種まき前の準備が重要です。種まきの2~4週間前には、土に石灰を入れてよく耕しておきます。その後、堆肥や元肥を入れてよく鋤き込み、畝を立てます。1列栽培なら幅は30cm、2列での栽培なら幅は60cmが目安です。列の間隔は30cmくらいとっておきましょう。そして5mmほどの深さの溝を作り、1cm間隔で種をまきます。その後は発芽するまで乾燥しないように、水を与えて管理します。
栽培ポットを使う場合は?
春に種まきを行う場合は、栽培ポットで育成してから畑へ植え付ける方法も可能です。まずは種を栽培ポットにばらまきして、本葉が1枚から2枚ほどついたら、生長のよい苗を1~2本残して間引きます。そして本葉が4枚から5枚つくくらいまで成長したら、栽培ポットから畑へ植え替えます。
春菊が好む土は?
鉢・プランター栽培の場合は、市販の野菜の培養土でOKです。自分で土を作る時は、赤玉土(小粒)6:腐葉土2:バーミキュライト2の割合で混ぜてください。春菊は再生土壌が苦手なので、地植えの場合は種まきの4~2週間前に、土に石灰を混ぜて耕しておきます。また、春菊の種は「好光性種子」といって、発芽の際には光が必要です。種まき後の土は、軽く被せる程度にしておきましょう。
春菊が好む日照条件は?
日当たりも風通しもよい場所を好みます。特に発芽の際には光が必要なので、地植えの際は必ず日当たりのよい場所を確保しましょう。ただし、春菊は光に長く当たり過ぎる日や、高温の日が長く続くと、「とうだち」という花芽分化によって茎が急速に伸長する現象を起こすことがあります。とうだちが起きると味や食感が落ちてしまうので気をつけましょう。特に春の時期の遅まきは、とうだちの原因になりやすいので注意が必要です。
出典:写真AC