オナモミは絶滅危惧種?
河川敷や空き地でしばしば見かけられるオナモミですが、日本のレッドリストにおいて絶滅危惧Ⅱ類に指定されている絶滅危惧種です。さらに、すでに絶滅してしまった県もいくつも発表されています。現在日本で見かけられる雑草のオナモミは、そのほとんどが外来種のオオオナモミやイガオナモミです。
外来種の影響で希少に
日本に古くから生えているオナモミは、アジア原産の在来種です。しかし1929年、岡山県ではじめてオオオナモミが観測されました。その後オオオナモミは爆発的に全国に広がり、現在日本国内で見つかるオナモミは、そのほとんどがオオオナモミです。また、地域によってはオオオナモミよりさらに大きなイガオナモミが増えています。
オオオナモミとイガオナモミ
北アメリカ原産のオオオナモミは、その名のとおりオナモミより一回り大きい実が特徴です。南アメリカ原産のイガオナモミはさらに大きく、より長いトゲを持っています。どちらも広い範囲に種子を運べるため、日本に古くから生えているオナモミの生息地域を脅かしています。
トゲが長いものほど移動しやすい
なぜオオオナモミやイガオナモミは、オナモミより広範囲に種子を広げられるかというと、長いトゲに答えがあります。トゲで服や毛に深く絡みつくことで、より遠くまで移動可能です。またオナモミ科は、別の種類が近くで生えていると互いに実が付きにくくなるため、数が少ないオナモミのほうがより繁殖が難しくなります。
オナモミの種類と見分け方
現在、日本で見かけられるオナモミのほとんどは、オオオナモミかイガオナモミです。しかし東日本を中心に、オナモミが残っているとされる地域もあります。トゲのついた実が印象に残りやすいためどれも一見同じように見えますが、それぞれの違いと見分け方を知ることでどのオナモミなのか確認できます。
オナモミの特徴
- 草丈が低く50cm前後
- 葉は根本に近い側がハート型・先端が丸みを帯びた三つ又
- 実は卵型で小さく、トゲはまばら。産毛が多い
- 熟した実は、黄褐色
オオオナモミの特徴
- 草丈が高く1~2m
- 葉は根本に近い側がハート型・先端がギザギザに尖った三つ又
- 実は細長く、トゲは密。産毛が少ない
- 熟した実は、濃い褐色
イガオナモミの特徴
- 草丈が高く1~2m
- 葉は根本に近い側が水平に広がる・先端がギザギザに尖った三つ又
- 実は卵型で大きく、トゲは密。トゲからさらにトゲが分岐して生える
- 熟した実は、焦げ茶色
ひっつき虫の仲間たち
ひっつき虫と呼ばれる植物は、オナモミだけではありません。いろいろな植物が、近くの動物にひっついて遠くまで種子を運んでもらっています。かえしの付いたトゲでひっついて離れないセンダングサやイノコグチ、粘液を使うメナモミやヤブタバコなど、種類によってひっつく方法もさまざまです。
ひっつき虫の仲間①メナモミ
メナモミは、キク科メナモミ属の植物です。全体に生えた産毛と黄色い花が特徴です。また、花の周りには粘り気があり、花に触れると簡単に花の一部がはずれます。そのように離れた部分には種子が入っており、産毛とねばねばしたものを使って、服や動物にひっつくわけです。
名前は似ているけれど別の植物
メナモミの名前の由来は、雌のナモミです。そのため、オナモミとはセットで名付けられた植物です。一方オナモミとメナモミはあまり似ておらず、ひっつき方も異なります。しかし薬効があることは共通しており、痛風やはれものの痛みに効くといわれています。
ひっつき虫の仲間②センダングサ
センダングサは、キク科センダングサ属の植物の総称です。秋になると小さな花をたくさん咲かせる雑草です。やがて冬になると種子が球状に固まり、まるでタンポポの綿毛のようにも見えます。この種子にはかえしつきのトゲがたくさんついているため、近くを通った動物に簡単にひっつきます。
ばらばらの種子がひっつく
靴や服のすそ・飼い犬の毛などに、細長く黒いトゲのようなものがたくさんひっついてしまった経験があるでしょう。地下茎でつながって増えるうえにとても丈夫なため、さまざまな種類のセンダングサが道端や河川敷などに広まっています。
ひっつき虫の仲間③ヤエムグラ
アカネ科ヤエムグラ属のヤエムグラは、非常にユニークなひっつき虫です。ヤエムグラの茎は細く柔らかいため、1本だけではまっすぐと伸びられません。しかし、植物全体に小さなトゲが生えており、近くにあるものにひっつくことで体を支えて成長します。ヤエムグラの群生では、ヤエムグラ同士が互いに体を支え合って成長している様子が見られます。
茎も種子もひっつく
ヤエムグラは、茎も種子もどちらもひっつくひっつき虫です。小さな種子は丸く全体にトゲが生えているため、ちょうどオナモミの実を小さくしたような形です。この種子が、近くを通った動物にひっつくことで、遠くに運ばれていきます。また、輪状に葉が生えている部分は節になっており、この部分からちぎれてひっつくこともできます。
たまにはオナモミで遊びませんか
オナモミは、道端や河川敷などでよく見かけられる雑草です。アクセサリーや的あてゲームなど、子どものおもちゃにもよく利用されています。しかしそのほとんどは、日本に昔からあるオナモミではなく、外来種のオオオナモミやイガオナモミです。子どものころに遊んだオナモミも、実は外来種のオナモミだったのかもしれませんね。
- 1
- 2
出典:写真AC