馬印(うまじるし)の千成瓢箪
千成瓢箪が豊臣秀吉の馬印になったのは、戦国時代に若き日の彼が立てた功績が関係しています。彼の主君である織田信長が、美濃の戦国大名・斎藤家を攻めていた頃の話です。斎藤家の居城である稲葉山城は「難攻不落」と恐れられた堅城でした。実際に織田信長もなかなか攻略できずにいたのです。そこで当時は「木下藤吉郎」と名乗っていた豊臣秀吉が、背後から城を奇襲する作戦を進言し、実行しました。
千成瓢箪は多大なる功績の証
豊臣秀吉の奇襲作戦は見事に成功しました。このとき、織田信長本隊への合図に使ったのが、彼が槍の先につけた瓢箪でした。その後、1567年に稲葉山城は落城します。織田信長は豊臣秀吉への褒美として、瓢箪を馬印にすることを許可しました。こうして千成瓢箪は、豊臣秀吉の馬印となったのです。
その結果、瓢箪がたくさんついた「千成瓢箪の馬印」が完成したんだね。馬印の千成瓢箪は、豊臣秀吉が立ててきた多大な功績の証ともいえるね。
野菜の千成瓢箪
ここからは、野菜としての千成瓢箪について紹介します。千成瓢箪とは、数ある瓢箪のなかでも、小型で多くの果実をつける種類のことです。基本種の瓢箪は、おもに容器として加工される目的で栽培されていますが、生命量の強さからスイカやカボチャの台木に利用されることもあります。
瓢箪は種類豊富な植物なんだ。千成瓢箪とは逆に巨大な果実をつける種類や、食べられる種類もあるんだよ。
ちなみに瓢箪の同一種の夕顔(ゆうがお)は、カンピョウ(干瓢)に加工する目的で栽培されることが多いです。
千成瓢箪の特徴
特徴①果実を多くつけるつる性植物
前にも触れたように、千成瓢箪は瓢箪の種類の1つで、小型で果実を多くつけるのが大きな特徴です。収穫時期には、小さい瓢箪がたくさんなっている見事な光景を見ることができるでしょう。収穫するタイミングは遅れても問題ありませんが、早過ぎると皮が薄くて加工に向きません。果実を加工して使いたい場合は、収穫するタイミングに注意しましょう。
特徴②生命力が高く栽培が容易
千成瓢箪は瓢箪の1種類なので、基本的な性質や育て方は瓢箪の基本種と変わりません。瓢箪は「最古の栽培植物」と呼ばれているほど、古い栽培の歴史を持つ植物です。そのため生命力が強くて育てやすく、初心者でも安心して育てられます。つる性植物なので、鑑賞や加工以外にも、グリーンカーテンとして利用されることも多いです。
特徴③プランター栽培やベランダでの栽培もOK
千成瓢箪は瓢箪の種類のなかでは小型であることから、プランター栽培や、ベランダや狭い庭などの小さなスペースの栽培に向いています。特に暑い夏の時期は、ベランダに面した窓辺の日よけとして利用するとよいでしょう。適度な日よけになるうえに、花や小さなかわいい果実がたくさんついている様子が、目を楽しませてくれますよ。
特徴④じつは有毒植物
瓢箪には「ククルビタシン」という成分が含まれています。この成分は苦味成分であると同時に、嘔吐や下痢などの食中毒を引き起こす有毒成分です。このため、瓢箪の果肉を食べると食中毒の原因になります。当然のことながら、千成瓢箪にもこの成分が含まれています。果実を加工するときも、果肉を口にしないように注意しましょう。
カンピョウの原材料になるユウガオは、瓢箪のなかでもククルビタシンが少ない種類を選別した変種なんだ。
特徴⑤食用種がある
上記で紹介したとおり、瓢箪は有毒成分ククルビタシンを含んでいるため、通常は種類を問わず食べられません。しかし、なかにはククルビタシンの含有量が少ない品種があり、それらは食用種として扱われています。千成瓢箪にも食用種があります。ただし食用種は収穫時期を迎えると、皮が硬くなってしまうので注意が必要です。早めのタイミングで収穫することを意識しましょう。
繰り返しいいますが、食べられる瓢箪は「食用種」と認定されているものだけです。種や苗を購入する際は、きちんと確認しましょうね。
食用瓢箪の料理には、早いタイミングで収穫した若い実を使うんだ。漬物や煮物にして食べることが多いよ。瓢箪の漬物は通販で購入できるよ。
特徴⑥加工も可能
瓢箪の果実は、水稲や酒器、調味料入れなど、昔からさまざまな加工品作りに収穫されてきました。千成瓢箪も完熟した果実を加工できます。千成瓢箪は通常の瓢箪と比べて小型であることから、小さめの置物にすることが多いといわれています。
千成瓢箪も大きさはいろいろあります。大きさや用途を考えて、いろいろな加工作品を作るのも素敵ですよ。
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豊臣秀吉が千成瓢箪を馬印とした当初、瓢箪は1つだけでした。その後は戦に勝つごとに、馬印の瓢箪の数を追加していったのです。