パッションフルーツの概要
パッションフルーツは南米原産のトケイソウ科の果物です。豊かな香りとゼリーのような果肉、小さな黒い種子を特徴としています。日本へは18世紀、南米から渡来しました。現在、日本では沖縄や屋久島、小笠原諸島などで生産されていますが、輸入物が多いです。流通しているパッションフルーツの種類は果皮が紫色のものと、黄色いものがあります。
名前の由来
パッションフルーツの名前は花の形に由来しています。パッションフルーツはトケイソウ科の植物であるため、花はトケイソウと同じく時計の文字盤を連想させる形状です。大航海時代、キリスト教の布教活動で南米にやってきたイエズス会の宣教師は、トケイソウの花を『かつて聖人が夢に見た「十字架上の花」は、この花に違いない』と信じ、「キリストの受難の花」と呼んでいました。
「十字架上の花」とは、キリスト教の聖人「聖フランチェスコ」が夢で見た花のことです。磔刑時のキリストを表しているといわれてます。
トケイソウの花の時計の針に似た部分が、宣教師たちには十字架に見えたんだろうね。
「情熱」ではなく「受難」
パッションフルーツの「パッション(passion)」の意味は「情熱」ではなく「受難」です。「受難」はキリストの磔刑を指します。トケイソウを「passion flower(受難の花)」と呼んだことから、トケイソウの仲間で花もよく似ている果物のことも「passion fruit(パッションフルーツ:受難の果物)」と呼ぶようになりました。
パッションフルーツのおもな生産地
パッションフルーツは世界の熱帯~亜熱帯地域で栽培されています。ブラジルを中心とした中南米地域での栽培が主流です。アジアでは台湾やインドネシアなどで広く栽培されています。日本では沖縄県、鹿児島県、奄美大島、屋久島、小笠原諸島などの島々、熊本県などがおもな生産地です。日本でのパッションフルーツ栽培はハウス栽培が主流でしたが、近年は露地栽培も進んでいます。
熱帯~亜熱帯原産のパッションフルーツは、沖縄県や鹿児島県のような南国、または屋久島のような温暖な島で栽培されてきました。
近年は長野県、岐阜県と栽培地域が広がっているよ。特に岐阜県では、本州最大規模でのパッションフルーツの露地栽培が行われているんだ。
パッションフルーツの旬の時期
パッションフルーツの旬の時期は、一般的には6月~8月です。ただし地域や栽培方法によって収穫時期が異なります。たとえば輸入物は通年流通するため、特に「旬の時期」と呼べる時期はありません。沖縄県や鹿児島県の屋久島などの温暖な南の地域では、ハウス栽培で早く育つものは2月頃から収穫が始まります。露地栽培の場合は、一般的な旬の時期に近い5月~6月頃です。
食べ頃の旬の時期は好みで違う
パッションフルーツの食べ頃の時期は、好みで違ってきます。パッションフルーツは基本的に完熟状態で収穫される果物です。購入後すぐに食べられます。特に多く流通する6月~8月が旬の時期であり、食べ頃といえるでしょう。しかしパッションフルーツは完熟しても酸味が強いため、甘い果物のほうが美味しいと感じる、または酸味が苦手な場合は、購入後に少し時間を置いて追熟させます。
酸味がある果物が好みな方は購入してすぐの時期、甘い果物が好みな方は、購入後少し時間が経過した時期が食べ頃となります。
もともと酸味が強いパッションフルーツは、完熟させても甘味より酸味のほうが強く感じられる果物なんだよ。
パッションフルーツのおすすめの食べ方
おすすめの食べ方①そのまま生で食べる
パッションフルーツで特におすすめの食べ方は、そのまま生で食べることです。パッションフルーツを真横に半分に切り、そのままスプーンで種ごとすくって食べます。パッションフルーツは種も食べられる果物です。豊かな香りと甘味と酸味、ゼリーのような果肉の食感、小さな種のパリパリした食感が美味しいですよ。パッションフルーツならではの美味しさを、特に強く感じられます。
スプーンですくった果肉と種をそのまま食べずに、ヨーグルトにかけてから食べても美味しいですよ。
パッションフルーツは果皮が紫色の品種と、果皮が黄色い品種があるけど、食べ方はどちらも同じだよ。
おすすめの食べ方②ピューレにする
ピューレもパッションフルーツのおすすめの食べ方です。取り出した果肉を目の細かいザルなどで裏ごしして種を取り除けば、パッションフルーツのピューレができあがります。ピューレはお菓子や飲み物、料理のソースなど、さまざまな用途に使えるため、食べ頃のパッションフルーツがたくさん手に入ったときにも、おすすめの食べ方といえるでしょう。
パッションフルーツのピューレを使って、美味しい料理やお菓子を作りましょう。
ピューレは裏ごしして種を取り除くから、「種が食べにくいから、そのまま食べるのは苦手」という方にもおすすめの食べ方だよ。
おすすめの食べ方③ジュースやスムージーにする
パッションフルーツは、ジュースやスムージーにしても美味しい果物です。南国の果実らしい酸味と香りが、乾いたのどをさわやかにうるおしてくれるでしょう。作り方も簡単です。氷と水といっしょにミキサーにかければできあがります。甘味をつけたいなら、ガムシロップやはちみつを加えましょう。種が気になる場合は果肉を取り出す際に裏ごしするか、攪拌後こしながらコップにそそぎます。
パッションフルーツの追熟の仕方
パッションフルーツの酸味が強い場合は、追熟させます。基本的には数日間常温保存するだけです。パッションフルーツは熱帯~亜熱帯で育つ果物なので、気温や湿度が高い場所でも保存に問題ありません。パッションフルーツは追熟が進むと、果皮にシワが出てデコボコした状態になります。これは水分が抜けて甘味が増した証拠です。
原産地の南米では、果皮にシワがよった状態こそが「パッションフルーツの食べ頃」とされています。
南米のスーパーでは、果皮がシワシワでデコボコしたパッションフルーツが「食べ頃で美味しい果物」として販売されているんだよ。
追熟を早める方法
パッションフルーツの追熟を早めたい場合は、リンゴといっしょに密閉袋に入れて口を閉じ、常温保存します。リンゴはエチレンの放出量が高いため、追熟を早める効果があるからです。エチレンは植物ホルモンの一種で、果実の老化や追熟を早める作用があります。リンゴは果物のなかでもエチレンの放出量が多いため、ほかの果物といっしょに密閉袋に入れると、その果物の追熟が早まるのです。
リンゴは品種によってエチレン放出量が異なります。追熟促進効果を狙うなら、エチレン放出量が多い「つがる」「王林」などがおすすめです。
じつはパッションフルーツも、本来はエチレン放出量が多い果物なんだけど、追熟していないときの放出量は、そんなに多くないんだよ。
追熟を遅らせる方法
パッションフルーツの追熟を遅らせたいなら、冷蔵庫などで冷やすことです。ただし、熱帯植物であるパッションフルーツは冷温が苦手なので、長い間冷やすのはおすすめできません。また、パッションフルーツは追熟が始まるとエチレンを放出するため、ほかの野菜や果物を傷める恐れがあります。そのためパッションフルーツを冷やす場合は、エチレンが放出されないように密閉袋に入れましょう。
食べ頃のパッションフルーツを冷やすときも、ほかの野菜や果物から離しておいたほうがいいですよ。
次は「パッションフルーツの保存方法」だよ。
出典:写真AC