花散里とは?
花散里(ハナチルサト)は「トウカエデ(唐楓)」という樹木の園芸品種です。別名をメイプルレインボーといいます。トウカエデは街路樹に利用されるほど丈夫で育てやすい樹木です。トウカエデの改良種である花散里も、とても育てやすく手間がかかりません。別名の由来にもなった、さまざまな色に変わる美しい葉色もあって、人気上昇中の樹木です。
別名のメイプルレインボーの「レインボー(虹)」は、「七変化」と表現されるほど変わる花散里の葉色に由来しているんだよ。
名前の由来
花散里という名前は、平安時代に紫式部が著した小説「源氏物語」に登場する女性「花散里」からとられました。花散里は「源氏物語」の主人公である光源氏の妻の1人です。美人ではありませんが温和で慎み深く、誰からも信頼される人格者でした。光源氏も彼女の人格を見こんで、息子の夕霧の養育を任せたほどです。このため、数多い光源氏の妻のなかでも高い立場にありました。
光源氏の息子の夕霧は、生まれてすぐに生母を亡くしました。そのため、信頼できる女性に養育を頼まなければならなかったのです。
そして選ばれたのが花散里なんだ。光源氏は彼女のことを「大事な息子を任せるに足る女性」と認めていたんだね。
花散里の特徴
特徴①七変化する葉色
トウカエデ 花散里 ( ハナチルサト )
参考価格: 4,799円
花散里の特徴は、何度も変わる葉色です。メイプルレインボーという別名の由来にもなっています。花散里の最初の葉色、つまり新芽はピンク色です。新芽~葉へ成長する過程で色が抜けて白くなり、さらに緑色に染まります。真夏の頃には鮮やかな深緑色に、紅葉の季節に入るとオレンジ色~紅紫色に変わり、落葉します。
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
---|---|
高さ | 0.7m |
特徴②原種よりも寒さに弱い
花散里は原種のトウカエデよりも寒さに弱いといわれています。トウカエデは街路樹になるほどの丈夫さを持ち、改良種である花散里も丈夫で育てやすい樹木です。しかし品種改良の過程で、原種とは異なる性質を持ったのでしょう。
花散里は観賞価値の高さを強化した園芸品種です。美しい葉色を出すために、性質も変化したのでしょう。
どんなに品種改良技術が進んでも、見た目の美しさと強健性のバランスをとるのは、とても難しいことなんだよ。
特徴③洋風向きの庭木
花散里は洋風向きの庭木といわれています。カエデは和風庭園によく利用されるため、和風向きといわれることが多いです。しかし花散里の葉は白やオレンジといった色に変化するため、とても明るい雰囲気を演出します。通常のカエデにない葉色と雰囲気が、洋風の庭によくあうのです。
花散里は色彩が乏しくて暗い雰囲気の庭を、明るくしたいときにもぴったりですよ。
花散里の育て方
花散里はトウカエデの園芸品種なので、基本的にはトウカエデの育て方に準じます。落葉樹なので、寒い季節は落ち葉の掃除も必要です。植える場所は掃除することも考えて選びましょう。花散里の美しい葉色の変化も、健やかに育った木で見られるものです。育て方のポイントをしっかり押さえましょう。
一年間の管理スケジュール
育て方のポイント①栽培環境
花散里が好む栽培環境は、日当たりと水はけがよい場所です。丈夫な樹木なので日陰でも育ちますが、日当たりが悪いときれいに紅葉しません。花散里の七変化する葉色を楽しむためにも、日当たりがよい場所を確保しましょう。花散里は地植えすると3m以上に成長するため、植える場所は広めにとることも重要です。
大株に育った花散里の葉色が変化する様子は圧巻ですよ。落葉樹なので、落ち葉の掃除はきちんと行いましょう。
花散里は鉢植え栽培も可能だけど、広い庭があるなら、大きく育ててメインツリーにするのもおすすめだよ。
育て方のポイント②用土
花散里の用土は、肥沃で水はけがよければ土質は問いません。地植えの場合は庭土に川砂や腐葉土を混ぜ込んで、水はけをよくしておきましょう。鉢植えの場合は、赤玉土(小粒)または黒土7:腐葉土3の割合で、肥沃で水はけがよい用土を作ります。
育て方のポイント③植え付け・植え替え
花散里の植え付け時期は、休眠期にあたる11月下旬~12月です。地植えの場合は冬風で倒れる恐れがあるため、根付くまでは支柱を立てておきましょう。鉢植えの場合は、数年に1回のペースで植え替えが必要です。鉢の底穴を見て、根が回っていたら植え替えましょう。植え替えの適期は植え付け時と同じ11月~12月です。根鉢を崩さないようにして、少し大きめの鉢に植え替えます。
花散里を地植え栽培している場合は、植え替える必要はありません。
花散里は移植を嫌う樹木なんだ。地植えの花散里を下手に動かすと、生育障害を起こしたり枯れたりする可能性が高いんだよ。
育て方のポイント④水やり
トウカエデは乾燥に強い植物です。地植えの場合は、根付いた後は水やりする必要はありません。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら水やりします。鉢の下に受け皿を置いている場合、受け皿にたまった水が原因で根腐れを起こす可能性が高いです。水やりした後、受け皿にたまる水はこまめに捨てましょう。
育て方のポイント⑤肥料
花散里の肥料の適期は2月~3月と6月の年2回です。2月~3月は寒肥、6月は開花後の追肥として施します。与える肥料はゆっくり効いて植物に優しい緩効性固形肥料がおすすめです。花散里は秋以降に肥料成分が残っていると、きれいに紅葉しません。6月の追肥は、できるだけ早めに施しましょう。
育て方のポイント⑥剪定
花散里の剪定の適期は6月~7月と落葉後~12月です。特に落葉後の剪定は12月下旬までに済ませておきましょう。1月以降に枝を切ると樹液が出てしまいます。花散里は自然と樹形が整う樹木で、樹形を乱す徒長枝や、混み入った枝を整理する程度で十分です。強剪定は後の生育に悪影響を与える恐れがあるので避けましょう。
鉢植え栽培や盆栽のように、木をあまり大きくしたくない場合も、強剪定は避けて、こまめに枝を整理していこうね。
育て方のポイント⑦病気対策
花散里の栽培で、注意すべき病気はうどんこ病です。花散里は丈夫な樹木なので、よく育った樹木なら適切に対処すれば問題ありません。ただし植え付けたばかりの若い苗木や、小さく育てている鉢植えや盆栽の場合は、発見が遅れると枯れる恐れがあります。うどんこ病は多湿な環境で発生しやすい病気です。梅雨時などの湿気が多い時期は特に注意しましょう。
普段から花散里の木をこまめに観察し、少しの異常も見逃さないように心がけましょう。
うどんこ病などの病気の予防には、定期的な薬剤散布も効果的だよ。
育て方のポイント⑧害虫対策
花散里の栽培で、注意すべき害虫はアブラムシです。暖かい時期に大量発生し、養分を吸い取って株を弱らせます。さらに厄介なのはアブラムシの排泄物が病気やほかの害虫を発生させる原因になるなど、二次被害を生む恐れがあることです。日頃から木を観察し、発見次第早急に駆除しましょう。予防策として定期的な薬剤散布もおすすめです。
花散里の花言葉
花散里に固有の花言葉はありません。原種のトウカエデの花言葉がつけられています。トウカエデの花言葉は「節制」「遠慮」「自制・自制心」「大切な思い出」です。「遠慮」や「自制・自制心」など、控えめな意味の花言葉が多いのは、秋に紅葉する葉の美しさに対して花は地味で目立たず、いつの間にか開花時期を終えていることに由来しています。
花散里の七変化を楽しもう
花散里は1つの木でさまざまな葉色が楽しめる、たぐいまれな樹木です。機会があれば、庭に植えて、季節に応じて変わる葉色の美しさを身近で楽しんでくださいね。
トウカエデは秋に紅葉する樹木ですが、園芸品種の花散里は紅葉以外の時期も葉色が変わるんですよ。