夏の食べられる野草9選
オオバコ
開花時期 | 4月~9月 |
旬の時期 | 全草:7月~8月、種:9月~10月 |
オオバコ(大葉子)はオオバコ科の植物で、高地でも平地でも自生できる非常に丈夫な野草です。東アジアを中心にした広い地域で分布しており、日本では北海道~沖縄と、全国で見られます。オオバコは薬草としても有名です。漢方では古くから咳止めや去痰の薬として用いられていました。開花時期は春~秋ですが、全草が夏、種子が秋と、採取したい部分によって旬の季節が異なります。
オオバコのおいしい食べ方
オオバコを食用とする場合は、おもに若芽や若葉を利用します。天ぷら、おひたし、和え物、油炒めなどが定番です。オオバコはアクがあるので、調理前にしっかりアク抜きしておきましょう。葉を陰干しにしたものを炒って作るオオバコ茶も、よく飲まれてますよ。
カラムシ
開花時期 | 7月~9月 |
旬の時期 | 5月~8月 |
カラムシ(苧)はイラクサ科イラクサ属の植物です。南アジア~東アジアまでと広く分布し、日本では本州、四国、九州、沖縄と、北海道を除くほぼ全国で見られます。現在では雑草として扱われていますが、昔は植物繊維を採取するために栽培されていました。カラムシの茎からとれる繊維は非常に上質だったため、「越後縮」など伝統的な織物の原料にもなっています。
カラムシは高級衣類の原料として、古くから重宝されてきた植物です。しかし、時代の流れとともに栽培されなくなり、雑草化してしまいました。
安価で大量生産できる科学繊維の登場で、高価で手間もかかる天然繊維のカラムシの需要が減少・衰退してしまったんだよね。
カラムシのおいしい食べ方
からむし麺
参考価格: 1,500円
「からむし麺」は乾燥させ粉末状にしたカラムシの葉を、混ぜ込んで作ったうどんです。のど越しのよさとモチモチ食感から、家庭用・贈答用の両方で高い人気を得ました。カラムシは栄養豊富な野草です。ほうれん草よりもカルシウムが多く、レタスよりも豊富なビタミンB1のほか、カリウムやビタミンB2、βカロテンなども含んでいます。
おすすめ度 | ★★★★☆ |
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重さ | 200g×3 |
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カラムシは衣類の原料として用いられた歴史が長いこともあって、食用草としての利用は、ほとんどありませんでした。しかし近年になって、新潟県十日町市でカラムシの葉を練り込んだ「からむし麺(うどん)」や「からむし茶」が誕生しました。これらの商品は通販サイトでも扱っています。
シソ
開花時期 | 8月~9月 |
旬の時期 | 葉ジソ:5月~10月、穂シソ:9月、種(実)ジソ:10月 |
シソ(紫蘇)は「和風ハーブの代表格」と呼ばれるほど強い香りを持つ野草です。育てやすく小スペースでも栽培可能であるため、野草栽培する場合、初心者におすすめの野草とされています。葉、花穂、実(種子)のすべてが食用可能です。このため開花時期は夏ですが、収穫時期は夏~秋と長く、季節をまたいで収穫を楽しめます。日本の野草というイメージが強いですが、実際は中国原産です。
シソは古い昔から薬草としても用いられてきました。健胃・食欲増進の効能があるとされ、薬味にも利用されています。
シソ独特の香りには殺菌・防腐作用があるとされ、食中毒防止効果を期待されているよ。この性質を利用して作られたのが梅干しなんだ。
シソのおいしい食べ方
シソにはたくさんの種類がありますが、食用にされているのは「青ジソ」と「赤ジソ」の2種類です。青ジソの定番は天ぷら、刺身のツマ、薬味などです。赤ジソは紫色の葉茎を特徴としており、梅干しや紅ショウガの色付けに利用されています。このほかにも赤ジソには、乾燥した葉をふりかけにしたり、葉を煮出してジュースに加工したりといったレシピがあります。
スベリヒユ
開花時期 | 7月~9月 |
旬の時期 | 7月~9月 |
スベリヒユ(滑莧)は世界の熱帯~温帯に分布し、日本では北海道~沖縄の全土で見られます。冬には枯れる一年草ですが、非常に丈夫で生命力が強い野草です。ひとたび生えると駆除が難しいため、農家には「厄介な雑草」と嫌われています。一方で、身近な場所でとれる食用草や薬草として昔から重宝されてきました。東北地方や沖縄では夏野菜として食べられています。
スベリヒユは、漢方では解毒や消炎の効能があるとされています。おもに虫さされや湿疹の薬として用いられていました。
スベリヒユは優秀な夏野菜でもあるんだよ。オメガ3脂肪酸やビタミン類、ミネラル分など、貴重な栄養素をたくさん含んでいるんだ。
スベリヒユのおいしい食べ方
スベリヒユは開花も旬の季節も夏ですが、開花前の若葉がおいしいといわれています。茹でておひたしにする食べ方が一般的です。山形県ではスベリヒユを「ひょう」と呼び、茹でて辛子醤油で食べたり、乾燥させて保存食にしたりするなどと、身近な夏の山菜として幅広く利用していました。
スベリヒユは栄養も効能もある優秀な夏の野草ですが、食べ過ぎるとお腹を壊す可能性があります。食べ過ぎには気をつけましょう。
ドクダミ
開花時期 | 5月~6月 |
旬の時期 | 5月~6月 |
ドクダミ(蕺)は東アジア原産の多年草です。やや湿った陰地を好みます。旺盛な繁殖力を持つため、完全駆除が難しいことや、独特のにおいを持つことから、イメージはよくありません。しかし、ドクダミは多くの効能を持つすばらしい薬草です。下痢、便秘、胃腸病、食あたり、腫れ物、皮膚病などに効果があるとされ、外用薬・内服薬の両方で利用されています。
ドクダミは多くの効能を持つことから「十薬(じゅうやく)」とも呼ばれています。
ドクダミは「日本三大民間薬」の1つにも数えられているんだ。ちなみに残る2つはゲンノショウコとセンブリだよ。
ドクダミのおいしい食べ方
ドクダミは葉を食用します。ドクダミは開花し始める時期から薬効が高まるといわれているため、葉の収穫は初夏が適期です。ドクダミ独特のにおいは加熱、または乾燥させればやわらぐので問題ありません。調理法は天ぷらにしたり、乾燥させてお茶にするのが一般的です。
フキ
開花時期 | 1月~3月(平地)、3月~5月(山間部) |
旬の時期 | 6月~10月 |
フキ(蕗)は全国各地の山野で見られる植物です。近年は自生種が少なく、店頭やスーパーに並ぶフキは、人工的に栽培された種類が占めています。野草というよりは山菜というイメージが強い植物でしょう。また、フキには自生種と栽培種で旬の時期が異なる特徴があります。季節でいえば自生種は冬~春、栽培種は夏~秋です。栽培種のフキは、植え付けてから2年目以降のものを収穫します。
フキは蕾(フキノトウ)、葉、葉柄は食べられますが、根(地下茎)は毒があって食べられません。気をつけましょう。
フキの食用可能な部分にも毒成分が少しあるんだ。調理前には毒抜きもかねて、しっかりアク抜きをしておこうね。
フキのおいしい食べ方
フキの葉柄(茎)は、しっかりアク抜きした後、煮物や炒め物にするのが定番です。フキの葉柄を使った料理には「きゃらぶき(伽羅蕗)」という有名な料理があります。フキを砂糖と醤油で甘辛く味付けした佃煮で、常備菜や保存食にもなる便利な料理です。フキの葉はアク抜きした後、佃煮や炒め煮にすると、おいしく食べられます。
ノビル
開花時期 | 5月~6月 |
旬の時期 | 3月~5月 |
ノビル(野蒜)は北海道~沖縄のほぼ全国、土手や道端などの日当たりのよい草地に自生している野草です。古くから、身近な場所に生える食用野草として知られていました。見た目と香りがニラに似ているのが特徴です。開花時期は夏ですが、旬の時期はやや早く、春~初夏となります。春~初夏の山菜として扱われることも多いです。
ノビルのおいしい食べ方
ノビルは葉と地下の鱗茎を食べます。生、またはゆがいて酢味噌和え、天ぷら、醤油漬けが定番です。ノビルはニラやネギ、ラッキョウの仲間なので、これらの食材と同じ食べ方がよくあいます。冷奴の薬味やパスタのトッピングにしてもおいしいですよ。
ミゾソバ
開花時期 | 7月~10月 |
旬の時期 | 7月~10月 |
ミゾソバ(溝蕎麦)は東アジアに分布する一年草です。日本では北海道~九州の湖岸、沼沢地、小川沿いなどに群生しています。溝や川の縁に生息し、見た目がソバに似ていることが名前の由来です。また、ミゾソバは止血やリュウマチの効能があるとされ、民間療法では薬草として用いられていました。江戸時代後期の民間薬「石田散薬(いしださんやく)」の原材料でもあります。
石田散薬は現在は製造されていないんだ。当時は切り傷や打ち身、捻挫や筋肉痛などに用いられていたんだよ。
ちなみに石田散薬を製造販売していたのは、新選組副長土方歳三の生家です。土方歳三資料館には、当時の石田散薬が残されています。
ミゾソバのおいしい食べ方
ミゾソバはおもに、初夏の季節に収穫する新芽や柔らかい若葉を食べます。茹でてアク抜きした後、おひたしや佃煮、ゴマ和えや油炒めにするとおいしいですよ。秋は生の花を天ぷらにする食べ方もあります。またミゾソバの茎葉を乾燥させたものを煎じて飲むと、リュウマチに効くといわれています。
ヤブガラシ
開花時期 | 6月~8月 |
旬の時期 | 4月~8月 |
ヤブガラシ(藪枯)はつる性の多年草です。日本全国の道端や荒れ地、公園のフェンスなどで見られます。名前の由来は藪ですら枯らしてしまうほどの強烈な繁殖力です。このため非常に駆除が難しい雑草とされています。しかも夏に開花する花は、おしべが少なくて蜜が吸いやすいため、スズメバチやアシナガバチなどが好んでやってきます。これもヤブガラシを厄介な雑草として嫌う人が多い理由です。
嫌われ者のイメージが強いヤブガラシですが、根に解毒や鎮痛、利尿の効能があるとされ、生薬として扱われています。
ヤブガラシのおいしい食べ方
ヤブガラシで食用となる部分は、春~夏にかけて生えてくる新芽や若葉です。非常に強いアクがあるため、アクを抜くための茹で時間も水にさらす時間も長くかかりますが、丁寧に行いましょう。ヤブガラシの定番料理は天ぷら、おひたし、酢の物、和え物です。味噌汁の具材にしてもおいしいですよ。
秋の食べられる野草3選
イヌビユ
開花時期 | 7月~11月 |
旬の時期 | 4月~9月 |
イヌビユ(犬莧)はヒユ科の一年草です。空き地や道端のほか、畑や果樹園など、おもに人里で繁殖します。山地ではあまり見かけられません。初夏~秋にかけて盛んに成長し、冬に枯れてしまう一年草ですが、繁殖力旺盛な雑草です。夏に実った種子が発芽して、秋に花を咲かせるほどの成長力があります。イヌビユの旬の時期は初夏~秋です。若い株は全草、成長した株は若葉や茎先を食べます。
おいしい食べ方
イヌビユは山菜の定番でもある天ぷら、おひたし、和え物にするとおいしく食べられます。特にゴマ和えがおすすめです。イヌビユは味にクセがないので、ゴマの風味とよくあいますよ。若葉は刻んで味噌汁の具材にしてもおいしいです。秋が旬の食材とあわせると、季節感もアップします。
クズ
開花時期 | 8月~9月 |
旬の時期 | 新芽・葉:4月~8月、花:8月~9月、根:12月~3月 |
クズ(葛)はマメ科のつる性植物で、日本では「秋の七草」に数えられている野草です。繁殖力が強過ぎて他植物を圧倒してしまうことから、欧米では「世界の侵略的外来種ワースト100」の一種に選定されています。一方で、クズは根、花、葉は漢方薬や食用になり、つるからは籠などの生活用品が作れるなど、いろいろと役立つ万能植物です。昔は繊維を採取して織物も作っていました。
根を乾燥させた生薬は「葛根(かっこん)」、花を乾燥させた生薬は「葛花(かっか)」というんだよ。葉は生のまま揉んで、傷の止血に使うんだ。
葛根は風邪や下痢、葛花は二日酔いに効能があるとされています。
クズのおいしい食べ方
クズの根からとったデンプンで「葛粉(くずこ)」を精製する方法は、古来からとられていました。葛粉は葛餅や葛切りなどの和菓子や、料理のとろみづけに使用されています。春~初夏にとれるつるの先端部分や新芽は、茹でて天ぷらやおひたしにするとおいしいですよ。葉は若葉を天ぷら、おひたし、和え物にします。花は天ぷらや甘酢漬けのほか、砂糖煮にすると、お菓子作りにも使えます。
クズの根は用途によって収穫のタイミングが異なります。薬用なら初夏、食用なら冬となるので注意しましょう。
サルトリイバラ
開花時期 | 4月~5月 |
旬の時期 | 若葉:5月~6月、果実:10月~11月 |
サルトリイバラ(猿捕茨)は、つる性の多年生小低木です。日本では北海道~九州の山野で見られます。つるにトゲ、葉元にヒゲ根があり、これらを使って、ほかの植物にからまって育つ特徴を持っています。「この植物が生い茂ったところに入り込んだら、猿でも逃げられないだろう」と考えられたことから「猿捕茨」という名前がつきました。若葉と果実が食べられるため、旬の季節は夏~秋です。
サルトリイバラの根は、秋に掘り上げて乾燥させると漢方薬になります。
サルトリイバラの根には、解毒や利尿、皮膚病の効能があるといわれているんだ。腫れ物や膀胱炎の治療に用いられているよ。
サルトリイバラのおいしい食べ方
サルトリイバラの若葉は茹でて水にさらした後、おひたし、和え物、炒め物などにするのが一般的です。西日本には柏餅を作る際、柏の葉ではなくサルトリイバラの葉で餅を包む地域があります。秋に熟す果実は焼酎やホワイトリカーに漬け込むと、赤い色が美しく薬効も期待できる果実酒ができますよ。
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出典:写真AC